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Re: aptitude.xml訳(aptitudeReference Guide前半分)



武井伸光です.

 Thu, 17 Feb 2005 16:54:45 +0900
 Message-ID: <20050217165454.7ca71e8c.yasuo@xxxxxxxx>
> 査読及び改善のためのご指摘、お待ちしております。

私が誤訳と考えた箇所については,英文解釈の段階から,かつ,噛んで含め
るくらいの初級レベルの説明をします.
既知のことばかりでしたら堪忍してください.

http://homepage3.nifty.com/tak3/story/deciphering_english.html
に僕なりの英語の読みかたを書いてあります.

> 	  <citetitle pubwork='book'>不思議の国のアリス</citetitle>

アリスの部分の訳はプロジェクト杉田玄白の「不思議の国のアリス」と同一
のように見えます.もしそこからの引用なら,「(C) 1999 山形浩生」とい
う版権表示がこの xml 文書のどこかに必要なのをぜひ忘れずに.
プロジェクト杉田玄白のルールです.

>       &aptitude; is a large program with many features, and it is
>       sometimes difficult to remember how to do something, or even to
>       remember whether that something is even possible.  Indeed, many
>       feature requests received by the author describe features which
>       are already present but are difficult to find.
> 		&aptitude; は大きなプログラムで大くの機能があります、そして
>       それは時として幾つかの使い方を覚えたり、同様に何ができるのか
> 	   知るのを確実に難しくしています。
> 		貢献者からリクセストされているほとんどの機能は
> 		すでに提供されているが見付け難いものです。

数量の多寡を表わすのは「多く」ですねえ.

僕ならこう↓訳します.

&aptitude; は、たくさんの機能がある大きなプログラムで、
あることをどうやったらいいか思い出しにくく、
あることが可能なのかどうかすら思い出しにくいことさえもあります。

さて,英文解釈,やりましょう.

★第1文.

&aptitude; is a large program with many features, and it is
sometimes difficult to remember how to do something, or even to
remember whether that something is even possible.

【1】まずはこの文の主語部分と動詞部分がどれかを探します.
1-1)主語部分は(普通は)文の先頭にあるので,"aptitude" かしらと一応思っ
ておきます.

1-2)動詞部分は,(普通は)主語の次に来るので,主語の次の単語を見ると 
"is" です."is" は be 動詞ですから,動詞が確定します.

1-3)動詞が分かったら,さっき仮決定した主語の再チェックをします."is" 
が動詞になれるときは,主語が he とか she とか it とか a menu とか
a fish のときです(つまり,単数の代名詞や名詞のときです).
# I is a man. とか You is beautiful. とか Two heads is better than
# one. とは言いません.
aptitude というプログラムは「*一つ*のモノ」なので "is" が動詞になっ
ているのは問題ありません(ここで動詞も再チェックしているわけです).


【2】次.この文が五文型のうちのどの文型なのかを検討します.
2-1)英語の文は 5 つの文型に分類できます.文型というのは,英文の 1 文を
構造に分類したものです.文の骨格だと思ってもらっていいでしょう.この
骨格を押さえずに訳した結果の訳文は,無構造のものになります.

五文型は,SV, SVC, SVO, SVOO, SVOC の 5 種類です.
記号の説明: S は主語部分,V は動詞(の部分),O は目的語部分,C は補語部分.
五文型の共通点は,どの文型にも S と V が存在するということです.です
から,上の【1】で主語と動詞をまず決めたのです.

さて,主語,動詞,目的語,補語.と,文の部分を分類しましたが,辞書を
ひいてもこの単語は主語である,とか目的語だ,とか補語です,とは書いて
いません.辞書に載っている分類は,動詞,名詞,形容詞,副詞,接続詞,
前置詞とか,etc.です.
文型の構成要素である主語,動詞,目的語,補語と,辞書の分類である動詞,
名詞,形容詞,副詞,…というのは別の分類です.2つの分類を結びつける
と,こう↓です.
五文型の主語になれるものは, 辞書では名詞
五文型の動詞になれるものは, 辞書では動詞
五文型の目的語になれるものは,辞書では名詞
五文型の補語になれるものは, 辞書では名詞
五文型の要素 4 種類(S,V,O,C)を辞書の分類に対応させると,動詞と名
詞の2種類に分けられました.それ以外の形容詞とか副詞とかもろもろは,
英文の構造を読みとく際にはあまり重要ではありません.

2-2)文型の推定のための情報を持っているのは,動詞です.動詞には自動詞
と他動詞の 2 種類があって(辞書にもちゃんと載ってます),他動詞のあと
には必ず目的語が来ることになっています(SVO や SVOO や SVOC の V は他
動詞てことです).自動詞のあとには目的語は来ません(つまり,補語が来て 
SVC になるか,なにも来ないで SV になるかのどちらかです).

2-3)この文の動詞は is という be 動詞でした.be 動詞は SVC の文を作る
ことが非常に多い動詞です(SV のこともありますが,あまり見ないので省略).
この文が SVC だとすると,C となる名詞は何でしょうか.順に探していき
ましょう.
・be 動詞の直後の単語を見ると,"a" です.a は単数の名詞の前に付くも
の(不定冠詞という術語がありますが,この術語は忘れてください)ですから,
a の後には名詞が来ます(必ずしも直後には来ない).
・次の単語を見ましょう.large です.辞書を引くと,形容詞とあります.
形容詞は名詞の前に来ますから,次の単語が名詞になる可能性がさらに強く
なります(a があること,形容詞があること,の 2 つの根拠).
・次の単語を見ましょう.program です.辞書を引くと名詞(可算名詞とい
う術語があります.この概念はちょっと重要)です.やっと名詞が来ました.

さて,C のところに何が入るかを考えるときのコツを言います.
名詞だけの "program" を C とするよりは,冠詞+形容詞+名詞のカタマリを
ひとつの名詞部分と見て "a large program" を C としたほうが,僕には分
かりやすいのでそう考えることにします.

2-4)SVC の文では,「S=C」という重要なルールがあります.この文では 
"aptitude" = "a large program" という関係になります.この意味関係
は正しいですね.上の例文(誤文)の修正文 I am a man. は "I" = "a man" 
ですし,You are beautiful. は "You" = "beautiful" です.

2-5)これが,この文の最初の骨格です.そこまでの意味を取りましょう↓

      aptitude は大きいプログラムです。

この文の骨格はこれだけです.このように訳せて,それから残りの部分を追
加していくことにします.

【3】残りを解釈していきます.
3-1)残りの部分は "with many features, " です.1 単語ずつ見ていくこと
にしましょう.

3-2)with は辞書をひくと前置詞とあります.名詞の前に置かれるものなの
で前置詞という分類がされています.つけ加えると,前置詞の前にも名詞が
来るパターンが多いです(今回は program と名詞が来ています).前置詞の
前にある名詞は,前置詞以降の内容によって修飾されます.

ともあれ,with という前置詞のうしろ(直後とは限らない)には名詞が来ま
す.次の単語は many です.辞書をひけば,これは形容詞なので,次が名詞
になる可能性がさらに高まります.次は features と加算名詞(の複数形)で
すので,ここに名詞が来ました.

前置詞があったら,その前置詞からうしろの名詞まで(ここでは with から 
features まで)の意味を取るのが定石です.with many features は,

      たくさんの機能がある

です.「多数の機能を持っている」でもいいですし「多くの機能を含んでい
る」でも,なんでもいいです.辞書をひいて出てきた意味を*全部*眺めて
自分の好きな訳語をあてはめてください.このあてはめゲームに訳者のセン
スが出てきます(センス以外では,辞書の収録語数や文例数がゲームに影響
します).

3-3)features の直後にはカンマがあります.英文はカンマがあったら,そ
こで文が切れると思っておくと便利です.だからここで 1 つの文が終了し
ます.
しかし,カンマで切れない例外もあります.列記をする方法です.例は↓です.
I have an apple, two oranges and four bananas. 
この文は「私は1つのリンゴを持っています.2コのオレンジ.4本のバナナ」
とは訳せません.「私はリンゴ1個とオレンジ2コとバナナ4本持ってます」です.
A B C の 3 種類を列記するときには,英語では A, B and C とつづります.
or のときも同様.

3-4)カンマが来て文が切れましたから,ここまでの 1 文の意味を取りましょ
う.といっても2-5)と3-2)で訳したものをつなげりゃいいだけです.2-5)が
骨格で,3-2)がおまけでした.再掲↓
2-5)      aptitude は大きいプログラムです。
3-2)      たくさんの機能がある

上の,僕ならこうします,で挙げた文を再掲しましょう.
      &aptitude; は,たくさんの機能がある大きなプログラムで,

えとーさんの訳を再掲しましょう.
      &aptitude; は大きなプログラムで大くの機能があります、

なぜ僕は上のように訳したのでしょうか.その理由は,3-2)の末尾に書いて
あります.「前置詞の前にある名詞は,前置詞以降の内容によって修飾され」
るのです.具体的に言うなら,"program" は "with many features" で修飾
されるのです."with many features というカタマリ" を形容詞みたいなも
んと思ってもらってもかまいません.形容詞は名詞 の program を修飾する
ものですから,僕は 3-2) の内容をその場所に書いたのです.

僕が,えとーさんの訳から逆に英文を思い浮かべるなら,
  aptitude is large program and it has meny features,
になるでしょう.これだと many features の示すものは aptitude になっ
てしまいます.aptitude も program も同じものなんだからこの場合はかま
わないんですが,前の文が SVC でなかった場合は容易に破綻します.
# meny なのはわざと :)

★第 1 文の後半.
原文が遠く140行ほど離れてしまったので再掲しましょう.

and it is
sometimes difficult to remember how to do something, or even to
remember whether that something is even possible.

4-1)この文をさっきと同じように解釈していってもいいんですが,まだるっ
こしくて(僕が)ヤなので,別の方法で見ていくことにしましょう.
今度は,文を字面(じづら)で眺める作戦を取ります.

and は接続詞で文じゃないので無視.
it is sometimes difficult to まで見た時に,it is difficult to 不定詞
の形式だと直感します.
次を見ていきます.how to do something, のカンマを見た瞬間に,お,ここで
文が切れると直感します.
次です.or ですので,おお,さっきのカンマは,接続詞 or のためのカン
マかしら,文は切れてなかったのかなと思います.
すぐに次,even to remember まで来て,む? と止まります.さっきの it
is difficult to の "to 不定詞" ってなんだっけ,と見返すと,
to remember です.おお,同じ to remember だよ.

ここで,「カンマ」 と「接続詞 or」 と「2 つの to 不定詞」の 3 つの核
がつながります.A or B の形で,A が 1 単語よりも長いので A の末尾に
カンマが置かれてる形式だと分かります.

つまりこの文の構造は,
  it is 略 difficult      to remember (いろいろあるが略)
  , or
  it is    difficult even to remember (後は検討してないので略).
であって,その 3 行目の "it is    difficult" が省略されていることが,
訳に手をつけてない今の段階で,もはや分かってしまいます.

試しに上の 3 行を訳してみるとどうなるでしょうか.
  (いろいろあるが略)を思いだすのは難しい,
  または,
  (後は検討してないので略)を思いだすのさえ難しい.
これが骨格です.

4-2)あとは修飾語句なので,それを,修飾の方向を間違えずに訳すと
  何かをする方法を思いだすのは難しいか,
  あの何かが可能であるかどうか思いだすことさえ難しい.
が(まあそれなりの)直訳です.

★第2文.
>       Indeed, many
>       feature requests received by the author describe features which
>       are already present but are difficult to find.
> 		貢献者からリクセストされているほとんどの機能は
> 		すでに提供されているが見付け難いものです。

英文解釈をさらに続けるのは時間もかかるので,案↓を出すにとどめます.

実に,著者が受けとった機能の要望の多くは,現存しているが探しづらい機
能のことについて述べています.

直訳風味だと→実に,著者が受けとった多くの機能の要望は,出席している
が探しづらい機能を描写する.

なんでこういう解釈になるかは考えてください.僕の案よりも優れた訳文が
出てくるのを期待しています.

ヒントは,
・many を辞書でひくと
「1 [複数名詞の前に用いて; 通例否定または疑問文で] 多数の,たくさんの 」
と出るので,many が直接修飾する後続の可算名詞は複数形でないとダメ.
・文頭の,many 複数形の名詞がおそらく主語部分だから,動詞には三単現
のsなんて付きっこない.
・字面だけ眺めると are ほげほげ but are もげもげの形式が見えてくるの
で,これは同格関係で訳す(これは訳せてます).
くらいかな.

えとーさんの訳のまずいところは,
・「Indeed カンマ」 はどこいったの?
・received はどこいったの?
・describe を be 動詞のように勘違いしてませんか? もしくは忘れてる?
・author を contributor のように誤訳してませんか?
・many を almost のように誤訳してませんか? 
くらいかしら.あとは「セ」.

apt-get install lookup-el ndtpd して,辞書はちゃんと引いてくださいね.
辞書ひけば上記の誤訳はなくなると思います.
# 僕もここまで書くのに何回 C-c l したことか.

さて,最初のパラグラフだけでものすげえ量になっちまったので,ここまで
で送ります.

書いてないこと(SVOC の場合は O=C が成立,受動態は能動態に戻さないと
文型がつかめない)とかあるんですが,これは英文法の授業じゃないので書
きません.

では.

-- 
タケイノブミツ

「中途半端な想像力は、なにもないのよりも始末に悪い。」
                                先代デジニョーフの言葉