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Extremadura 国際化チーム会議報告 (翻訳)
debian-devel-announce@debian.orgにDebian国際化会議報告がアナウンスされ
ましたが、日本のユーザ・開発者・翻訳者いずれにも関わる内容ですので、大
まかに翻訳したものをお送りします。
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本記事は、
http://lists.debian.org/debian-devel-announce/2006/09/msg00012.html
の翻訳です。(武藤)
注意: JISの文字範囲で表現できない人名は類似の英字アルファベットを利用
しています。正式な綴りについては原文を参照してください。
去る 2006 年 9 月 7 日から 9 月 9 日の期間、第1回 Debian 国際化会議が、
スペインの Extremadura 州 Casar de Caceres において開催されました。
この会議は、スペイン Extremadura 地方 (Junta de Extremadura) 政府が完
全スポンサーとなっている「Extremadura セッション」の 1 つとして計画さ
れたものです。このスポンサーシップは、完全なフリーソフトウェアベースの
汎用 IT プロジェクトとして利用する彼らのカスタム Linux ディストリビュー
ション「LinEx」のベースとなっている、Debian Project へのコミットメント
と謝意に基いています。
Debian の国際化 (i18n) や地域化 (l10n) 活動、あるいは関連プロジェクト
におけるさまざまな分野を代表する、23 名の人々が世界中からこの会議に参
加しました。完全な参加者リストは、
http://wiki.debian.org/I18n/Extremadura2006 で参照できます。
会議は、いくつかの技術的目標および社会的目標で編成されました。
・ Debian Project における真の「i18n タスクフォース」を結成すべく第一歩
を踏み出すこと
・ Debian の国際化、地域化活動すべてに対する公式な「インフラストラクチャ
サーバ」を提供する最終計画を描くこと
・ WordForge フリーソフトウェアプロジェクトとの協業の推進。これはメ
キシコで開催された Debconf6 セッションにてすでに決定済みであり、
「Pootle サーバアーキテクチャの改善: バックエンドとフロントエンドの分
離」で「Google Summer of Code」プロジェクトの支援を受けた Gintautas
Miliauskas によって継続されてきた
・ Debian Packages Description Translation Project (DDTP) 復興の継続と、
初版 Debian i18n サーバへの統合の開始
・ 次に挙げるような、より専門的な発表、BOF、ブレインストーミングセッショ
ンの開催
・ po4a の利用方法
・ 次期リリースバージョン etch での localization-config の復活
・ Debian インストーラ (D-I) における提供言語のモジュール化
・ いわゆる「言語パック」
・ Debian インストーラの地域化状況のテスト
■Google Sumer of Code (GSOC) 2006 および Wordforge[1] の
Pootle[2] に関連するプロジェクト
[1] http://www.wordforge.org
[2] http://www.wordforge.org/drupal/projects/wordforge/tools/pootle
Gintautas Miliauskas は彼の GSOC 2006 の作業成果を発表しました。初期の
目標は、Pootle サーバでのフロントエンドとバックエンドを分離するという
もので、Pootle 開発者 (本会議に出席していた Wordforge プロジェクトの
Friedel Wolff、および Wordforge プロジェクトの共同管理者の Javier
Sola) と共に行われました。
Gintautus は、Pootle のストレージバックエンドとして利用できる能力を持
つストレージバックエンドの作成に成功しました。これは、Pootle フロント
エンドからストレージを分離可能になったということです。
Gintautas と Friedel Wolff は会議期間中、この成果を Pootle サーバに統
合する作業を開始しました (バージョン 0.10 が 2006 年 8 月 29 日にリリー
スされました)。
会議では、Wordforge のコントリビュータや管理者が、ロードマップに従った
より綿密な計画を立て、これらの計画に適合すべくどのように新しいリソース
を彼らのプロジェクトに持ち込むかを最終的に見積もりました。私たちは、
Debian Project の要求に適するような改善を進め、パートナーベースで活動
すべく、Wordforge コミュニティへの積極的参加を再度確認しました。
■Debian インフラストラクチャサーバの構築
Debian i18n タスクフォースおよび Junta de Extremadura の代理人 (現地で
のロジスティックス、旅程、その他関係する必要なものすべてを取りまとめた、
Cesar Gomez Martin) は、Debian 国際化活動にサーバを提供することについ
て同意しました。
このサーバは、スペインの Badajoz にある Junta de Extremadura データセ
ンターでホスティングされます。このサーバは、Debian 国際化活動に関する
すべてのため——まずは将来の Debian 国際化インフラストラクチャのテスト
プラットフォームとして、そしていずれは公式 Debian サーバネットワークの
1 つとして使われるようになります。
最初の段階では、このサーバは debian.net ドメインに加わります。現地連絡
先として Cesar Gomez Martin が支援の下、Felipe Augusto van de Wiel が
主サーバ管理者となります。Felipe は、テストとセットアップ段階に向けた
システム管理チームを結成する予定です。
会議期間中、Felipe によって最初のサーバがセットアップされました。私た
ちはこれを Debian 国際化インフラストラクチャに向けた最初の技術的業績と
考えています。このサーバは、Pootle サーバおよび、別のソフトウェアある
いは競合するソフトウェアをインストールセットアップするのに利用できる
chroot 環境を備えています (Eddy Petrisor は、transdict 実装のセットアッ
プ作業を開始しました)。
最初の作業は、DDTP プロジェクトのリーダーであり本会議に参加していた
Michael Bramer の助力の下、Debian パッケージ説明翻訳から展開したデータ
をサーバに「フィードする」ことでした。これらのデータは、Wordforge 開発
者にとって、Pootle をその限界ぎりぎりまで突き押し、高負荷下での能力を
向上するのに役立ちます。
このデータは、高負荷環境における、Gintautas の作業 (ストレージバックエ
ンド) の統合をテストするのにも役立ちます。
■DDTP の将来
Michael Bramer は DDTP プロジェクトの状況を発表しました。Debian ミラー
インフラストラクチャはすでに、改変 APT バージョンで利用できるような
Translate-<言語> の提供準備ができています。これらの翻訳説明文を利用でき
る APT バージョンは充分にテストされています。
i18n チームは、この改変版 APT を etch に導入し、翻訳説明文の機能とこれ
によって発生する可能性のあるバグ解決をサポートする約束に同意しました。
翻訳の更新にあたっては、非常に基礎的なインフラストラクチャが存在します。
このインフラストラクチャは、理想的なインフラストラクチャからはほど遠い
にせよ、素材翻訳の非常に単純な要件には適しています。
生の DDTP 素材から生成された PO ファイルをデモ Pootle サーバにフィード
するという初めての試みが実施されました。完全に成功というわけではありま
せんでしたが、これは問題を把握するのに役立ちました。いくつかのデバッグ
作業後、私たちは速やかに DDTP 翻訳を含むデモサーバを持てることとなりま
した。これは高負荷テストに役立ちます。ただし、この方法による翻訳更新の
管理はサポートされず、このデモサーバは生産作業に使われるものではありま
せん。私たちは、Martijn van Oosterhout 作成の DDTSS インターフェイス
[3]の利用を推奨します。
[3] http://kleptog.org/cgi-bin/ddtss2-cgi/xx
■NMU キャンペーン
Debian i18n タスクフォースによる、より活発な行動の基盤が設計されました。
私たちは、数点の指針の下、作業——いくつかはリリース前、いくつかはリリー
ス後——を開始しま。
・ po-debconf への移行の完遂 (かつ、po-debconf の利用をポリシー要件とする)
・翻訳成果のパッケージへの取り込みを推進
・gettext 0.15 移行の支援
debian-i18n 疑似パッケージの追加要望の決議が採択されました。ほとんどの
作業は、このパッケージのメタバグを使って追跡されることになります。メタ
バグは、国際化バグの異なるカテゴリを識別するのに使われます (いくつかの
アイデアが出されました: transition-po-debconf (po-debconf 移行)、
transition-po4a-manpages (po4a man ページ移行)、transition-new-gettext
(新しい gettext 移行)、transition-utf8-support (UTF8 サポート移行)、
cat-po-debconf (po-debconf のカタログ)、cat-po-native (ネイティブプロ
グラムコードのカタログ)、cat-po4a (po4a のカタログ))。これらのメタバグ、
ブロッカー、既存の (言語向け) ユーザタグの組み合わせは、i18n タスクフォー
スにとって役立つでしょう。Gerfried Fuchs が、疑似パッケージ作成申請を
担当します。
来月中にできるだけ多くの po-debconf 翻訳をパッケージに押し込むべく、
NMU (Non Maintainer Upload、非専属メンテナによるパッケージ更新) キャン
ペーンを開始します。2005 年 1 月に po-debconf 移行を推進するために
Lucas Wall と Christian Perrier [4] によって行われた類似のキャンペーン
の前例にならったインフラストラクチャと手法を採用する予定です。
[4] http://people.debian.org/~lwall/i18n/
Thomas Huriaux と Gerfried Fuchs は、保留中の地域化バグを識別すること
から作業を始め、保留中の地域化バグの経過日数と数に従ってパッケージを
(できればさまざまなカテゴリで) 分類するつもりです。このキャンペーンの
ために Lucas のインフラストラクチャを再利用すべく、彼との連絡も行われ
ています (Felipe Augusto van de Wiel)。テンプレートは精査する必要があ
り (Stefano Canepa が担当)、NMU までのスケジュールもまたレビューが必要
となるでしょう。
最初の結果は次のとおりです:
http://lists.debian.org/debian-i18n/2006/09/msg00055.html
http://haydn.debian.org/~thuriaux-guest/l10n-nmu/nmu_bypackage.html
本会議に出席の Debian 開発者は、この NMU キャンペーンに参加することを
約束しました。
ユーザとのインタラクションに po-debconf を使っていないパッケージは、
Etch+1 では許されるべきではありません (リリースクリティカルと見なすべ
きです)。これはリリース目標として提案されるものです。
■localization-config (l-c) の復活
Christian Perrier は、Debian インストーラに関係して、インストールされ
たシステムの地域化を仕上げることを狙いとした、l-c パッケージについて発
表しました。
l-c は、sarge のインストーラにおいて、X サーバのキーボード設定、GDM の
地域化、辞書設定、KDE パラメータなどの、正しく設定されていない関連パッ
ケージに対し、パラメータに基づいてさまざまな地域化および国際化を処理す
るために使われています。
sarge では、l-c は第 2 ステージインストール中、パッケージおよびタスク
インストールの前後 2 段階で実行されていました。現在のところ、これは
Debian インストーラには再統合されていません。Debian インストーラチーム
は、これが Debian インストーラのリリースにとって致命的ではないにせよ、
再統合を望んでいます。
Christian は、この目的のためにいくつかの初期作業を行い、この全体のテス
トが必要であると述べました。新しい udeb パッケージを提供する、このパッ
ケージの新バージョンは、今週末中に ftp マスターによって承認処理される
予定です。
l-c の利用を以前に必要としていたいくつかの場面は、今では地域化を正しく
処理するようになっています。したがって、本ツールの重要性が下がるであろ
うことは、まったくあり得る話です。
しかし、l-c の挙動を etch に適応させるためのいくつかの作業は、今現在必
要とされています。Gerfried Fuchs は、バックアップメンテナの Christian
Perrier、主メンテナの Konstantinos Margaritisと協業して、この仕事を指
揮することに同意しました。
■フォントと入力メソッド (キーボード処理 - コンソールと X)
Javier Sola は、クメール語フォントについて発表しました。この発表は、ラ
テン文字使用者によって作られた (他言語使用者には問題のある) いくつかの
仮定 (文字高、ハイパーリンク装飾、メニューのショートカット) を指摘する
こととなりました。Friedel Wolff は、このような情報を収集するために翻訳
wiki で始まったページ
(http://translate.sourceforge.net/wiki/l10n/displaysettings) を示しま
した。
Guntupalli Karunakar は入力メソッド (X および Gnome キーボード、SCIM、
Firefox の IME 拡張) について述べ、Jaldhar Vyas は SCIM (Smart Common
Input Method) を発表し、武藤健志は日本語文字とその入力メソッドについて
説明しました。
このトピックは localization-config BOF セッション中でも提起されました。
このセッションは、私たちが Debian インストーラでサポートする全言語のマ
トリックスを作成し、それぞれに対して X でデフォルトのキーマップとすべ
きものを明確にし、その X のキーマップを console-setup ツールで再作成し
て console-data にそれを追加するというのは etch リリース後の課題として
興味深いのではないかというまとめで終わりました。これらのキーマップは
Debian インストーラでの単一候補となり、コンソールと X キーマップ間の一
貫性を得るのに役立つでしょう。Felipe Augusto van de Wiel がこの作業に
立候補しました。
■Debianの国際化・地域化ドキュメントの改善
とりわけ国際化ガイド (http://www.debian.org/doc/manuals/intro-i18n/)、
defoma、Unicode フォント、キー入力、scim などのいくつかのツールについ
てのドキュメント、CDDD (初心者向けの CDD) 構築のための手軽で簡単なガイ
ドといった国際化・地域化ドキュメントの改善が活動の一分野として提起され
ました。Jaldhar と Karunakar がこの作業に立候補しました。
■Debian インストーラの言語サポートのモジュール化
Debian インストーラの翻訳の処理方法を、今後とも私たちが提供してきたの
と同じくらい多くの翻訳を提供できるよう、どのように改良するかについて、
広範囲な議論が行われました。
現在の Debian インストーラの制限は次のようなものです:
・ 初期 RAM ディスク (initrd) のサイズ
・ RAM の消費量
・ 必要な帯域
代案がいくつか提案されました:
・ udeb から翻訳を分割し、ユーザが選択したものだけをダウンロードする
・ 言語ファミリごとに異なる initrd を生成する
・ 上級ユーザ向けではない質問のみを翻訳する
・ localechooser の翻訳 (全言語でのすべての国名) を縮小する
・ 2 つの udeb に翻訳を移動する (initrd コンポーネント用に 1 つ、その他
のコンポーネント用にもう 1 つ)
・ 利用していない翻訳を削除するために「lowmem」機構を流用する
■言語パック
当初の Debian インストーラモジュール化の関連議論として、このトピックは
濃い即席ブレインストーミングセッションとなりました。最初の概要の下書き
は http://wiki.debian.org/I18n/TranslationDataDistribution にあります。
言語パック (あるいは言語パッケージ) は、主パッケージから分割されて特定
の言語の翻訳を提供する、ソフトウェアパッケージの「補足物」です。これは、
別個のルートで配布され、上流開発者による製作、主パッケージソースからの
抽出、あるいは独立した第三者組織による作成、いずれも問いません。より詳
細な情報については、http://wiki.debian.org/I18n/LanguagePacks を参照し
てください。
現時点で、翻訳は Debian アーカイブにおいて次の形態で配布されています。
・ バイナリパッケージ
・ バイナリソフトウェアパッケージに関連するアーキテクチャ非依存のパッ
ケージ
この議論は、Ubuntu による言語パックアプローチの利点の 1 つ、すなわちリ
リース後に更新された翻訳を提供する能力にフォーカスして始まりました。
etch+1 (etch 初期リリース後の改良) に向けて類似の機能を達成すべく試み
ようと、私たちはいくつかの点で同意に達しました。いくつかの初期作業
(etch リリース前) には、次のものが含まれます:
・ MO バイナリファイルを別の場所に持てるようにする Ubuntu の glibc パッチ
・ 非 gettext データの翻訳更新の機構の研究
■Debian インストーラ翻訳のテスト
Debian インストーラの翻訳について、より多くのテストの必要性が繰り返し
述べられました。多くのユーザが彼らの言語でインストーラをテストすること
が重要です。Lior Kaplan は、これらのテストのために qemu を使う方法
(qemu の実行方法と、効率良く翻訳テスト・変更・再テストを行うテスト方法)
を発表しました。
■Debian の国際化インフラストラクチャサーバへの要件定義
この議論は、基本的に Debconf6 i18n セッションで言及した要件の再確認で
す (http://lists.debian.org/debian-i18n/2006/05/msg00135.html を参照)。
これらの確認済み要件は、より短い文書で正式に書き直されるべきものであり、
おそらくは wiki で維持されます。Wordforge 開発者から、これらの必須要件そ
れぞれに対し、サポート済みか、サポートを計画しているか、あるいは
Pootle のロードマップに追加すべきかといったことについて補足があるでしょう。
■i18n wiki と IRC チャネル
次期 i18n サーバは、献身的な国際化活動に向けた wiki 機能を持つ予定です。
私たちはその wiki の情報がより適切なものとなったら、それを一般 Debian
wiki に移動するつもりです。i18n wiki は会議や共通作業などに関する作業
専用の wiki とすべきものです。
i18n タスクフォースは、irc.debian.org の #debian-i18n チャネルで活動し
ます。Debian 開発者およびコントリビュータは誰でもこのチャネルに入るこ
とができ、ここにいる国際化の専門家たちにコンタクトをとることができます。
会議の映像は
http://meetings-archive.debian.net/pub/debian-meetings/2006/ で参照で
きます。
■会議の結び
会議参加者全員は、宿泊設備と旅費支援を提供し、本会議開催をサポートして
くれた Junta de Extremadura に深く感謝の意を表したいと思います。特に、
会議取りまとめにあたって途方もない作業量と情熱を注いでくれた (かの有名
な Extremadura の強い日射しを会議期間中ずっと予約しておいてくれたこと
も含めて) Cesar Gomez Martin には謝意を表明いたします。
私たちは、本会議の成果が Debian の国際化に大きな推進力を与え、Junta de
Extremadura で採用されている LinEx ディストリビューション[5]のような派
生成果物も含めたプロジェクト全体の利益となることを心から願っています。
[5] http://www.linex.org/
(議長Christian Perrier署名)
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武藤 健志@ kmuto @ kmuto.jp
Debian/JPプロジェクト (kmuto@debian.org, kmuto@debian.or.jp)
株式会社トップスタジオ (kmuto@xxxxxxxxxxxxxxx)
URI: http://kmuto.jp/ (Debianな話題など)