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[debian-users:13818] "Shishamo"'s Debian Book. (was Re: module configuration while installing.)
In <19990316004421I.shishamo@xxxxxxxxxxxxxxx>
[debian-users:13673] Re: module configuration while installing., Mar.16 '99 00:39 JST
shishamo@xxxxxxxxxxxxxxx says:
= そりゃもちろん、Ken N. さんだもの。激辛の評価でなけりゃウソですよね。
#3日間ほど、どーゆーいみかなやんでしまった...
= 私は自分のとった行動に対して、きちんと指摘してくださる方は基本的に歓迎
= です。きちんとした「指摘」をしようとすると、簡単な指摘でもけっこう時間
= と労力というコストがかかりますし、そういうコストを払ってまで、何かを伝
= えようとしてくださるのは大変に歓迎です。
じゃあ、まず簡単なほうから行きます。
o あからさまな間違い
- 4.4.1 正規表現
pathname expansionは「いわゆる」正規表現(re)ではありま
せんし、通常は直接的には関係しません。shell のpathname
expansionはgrepやsed 等のreとは全く異なっていますから、
このような表現をすると、本書の対象とするような読者には
誤解を与える恐れがあります。
pathname expansionのbashでの実装が、チョムスキー階層の
4、正規文法に則ったパーザによっておこなわれているので
あるのならばこれを正規表現とする事は意味的には間違いで
はないですが、いずれにせよそれは本書の目的とする範囲で
はないでしょう。
- 4.4.5 ジョブ制御
「ジョブ制御」について述べる上で、``emacs &'' などとい
う例は極めて不適切です。というより、これはジョブ制御と
は直接関係しません。ジョブ制御を取り扱えない
kernel/shellの組合せであってもこのコマンドラインは(表
面上は)ほぼ同じ挙動を示します。
ジョブ制御の本質にかかわるコマンドは、この直後に述べら
れている、jobs/fg/bgのほうです。さらっと紹介だけされて
おわっていますがそれならば、この\subsection に「ジョブ
制御」とつけるのは変です。
- 4.6.1 TCP/IP
「... ドメイン名が ... IPアドレスに割り当てられている。
このわりあてをおこなう組織が、日本においてはJPNIC だ。」
... まちがいです。(解説が必要なら言ってください)
- 4.6.1.2 ドメイン名
「... 以下のようなURL からプロトコル指定部分を除外した
部分だ」
定義の方向として逆です。例も、
``http://www.debian.or.jp/''
となっていますね。では、``http://''を取り除いてみましょ
うか。
``www.debian.or.jp/''
これはドメイン名ではないです。では、末尾の``/'' も「お
まけ」ということで取り除いてさしあげましょう。
``www.debian.or.jp''
これはFQDNですが、ここで述べようとしている「ドメイン名」
とは、
``debian.or.jp''
のことのはずです。ちがいますか?
- 4.6.1.3 ホスト名
Debian GNU/Linux では、/etc/hosts は「自分のマシンの名
前」には直接関係しません。関係するのは/etc/hostname の
ほうです。「自分のマシンの名前」はシステム起動時に
si::sysinit:/etc/init.d/boot
としてinitから呼ばれた/etc/init.d/bootが
hostname --file /etc/hostname
とすることで設定されます。ちなみに私のbo box(TP560) で
は、
kenn% cat /etc/hosts
127.0.0.1 localhost
kenn% hostname
zouave
kenn% cat /etc/hostname
zouave
kenn%
のようになります。
- 図4.16および4.17
``usr'' の現われている位置が変です。``usr'' はマウント
ポイントの名前ですから、これらの図の``/'' の側になけれ
ばいけません。そのマウントポイントにこれからマウントさ
れるブロックデバイス側にあらかじめ名前がついているわけ
ではないのですから。
- 8.1.2 dp/Note
「dp/Noteは、OMRONから発売されている、...」
いいえ、「オムロンソフトウェア」です。オムロンソフトウェ
アはオムロングループの1社ですが、オムロン(旧立石電機)
とは別法人です。注意してください。Wnn6も同様。
o あからさまなまちがいではないが、誤解が懸念されるもの
- 4.8.3 デバイスファイル
ブロックデバイスとキャラクタデバイスの違いを説明する上
で、「一度にまとまった量のデータをやりとりするデバイス」
「一度に少しずつデータのやりとりをするデバイス」という
表現をしたのでは、流通データ量で差異が決まるような印象
を与えるおそれがあります。「『ブロック』というまとまっ
た単位でデータのやりとりをするデバイス」などとしたいと
ころです。
本質的な違いは、「ブロックデバイスは『ブロック』という
細部構造をもつ」ということです。具体的にはこれは「ファ
イルシステムを構築する事ができる」ということになります。
キャラクタデバイスではこれはできません -- すくなくとも、
直接的には。
- 3.11 Debianの起動と終了 および 4.9.3 syncコマンド
「Unix系OSでは ... 絶対にリセットしてはいけない」
「通常、リセットする必要はない」「リセットが必要となる
場面はほとんど考えられない」くらいでいいんじゃないかと
思います。4.9.3 節を読むと何か非常に繊細なシステムのよ
うな印象を受けます。もちろん、事実は逆なわけです。
また、shutdown操作が必要なのはwin でも同様であり、さら
に、正常なshutdown操作をおこなわずに終了したあとの保全
性については、win のほうが遥かに、はるかぁぁぁに剣呑で
す。
- 4.2.1.2 tar + gz
tar はテープアーカイバであり、gzipはコンプレッサです。
また、lha、zipなどは「圧縮アーカイバ」なわけです。さら
に、gnu tarが``-z''オプションで外部コンプレッサを呼び
出せる事、gzipの名前があたかも``GNUのzip''を連想させる
事など、混乱と誤解を生みだす要素が.tar.gz には沢山あり
ます。対象読者層を考えれば、これらはもっとちゃんと整理
しておきたい所です。
- 4.1 UNIXの雰囲気
「UNIXは ... Ken Thompsonの研究の結果生まれ... 」
K.Thompson, D.M.Ritchie, M.D.McIlroy, J.F.Ossanna が
UNIXの最も初期からかかわって来たメンバであるとされてい
ます。さらにRitchie は、「『Thompsonと、それを多少手助
けした我々』というようにはとらないでほしい」と述べて
(*1)います。
MULTICS が挫折しようとしているときに、それでも彼らがOS
の開発をつづけようとしたのは、Ritchie によれば次の通り
です。
「我々は、... リモートアクセス可能な時分割多重システム
の本質は... コミュニケーションを密にすることができるこ
とにあると認識していた」
UNIXは、生まれ落ちるその瞬間、いや、それ以前に既に、コ
ラボレーションのためのインフラストラクチャとして位置付
けられていたわけです。そしてそれは直接的には彼らのコラ
ボレーションであり、Thompsonの独創だけによるものではあ
りません。ですから、Thompsonの名前のみをあげることは不
適切だと思われます。
ついでに言うと、この直後に芳尾さんがあげている3つの
UNIXの特徴ですが、これはむしろAT&T直系のUNIXにあてはま
ります。BSD やGNU には必ずしもあてはまらない部分があり
ます。(この点については、Pike, KerninghanはBSDに由来す
る``ls -C''に関する批判を述べて(*2)います。)
o 別にいーんだけど、でもどーしてもきになるのよね、という点
- たぶん私がプログラマなせいもあるんでしょうが、未定義の
用語がいきなりぽんっとでてくるのが凄く気になります。初
出の用語、とくに何らかの略称については「... とはxxx で
ある」ということを述べて頂きたいと思います。
- 用語の統一について
``Windows95/98''と``Windows9x'' の混在とかですね、具体
的には。``X'', ``X Window System'', ``X Window環境''な
んてのもかなり混在しています。
さらに、``Debian''という用語が出て来るのは個人的には眉
をひそめます。``Debian GNU/Linux''と常に表記すべきでしょ
う。別の概念を指し示しているならまだしも。
これは本書のタイトルでさえあるわけです。例えば、各節の
冒頭に、
「Debian GNU/Linux(以下、Debianと略記します)では、ほげほげ」
などのように表記した場合でさえ、私の個人的な価値観の中
においては「横着」とさえいえるほどです。あくまで主観な
んですが。
- \cite{} 使ってますか?
外部参照は別に構いませんし、それを沢山盛り込む事が本書
の目的のひとつでもあるのですから、本文中に外部参照が現
われるのは当然なんですが、現われ方が乱暴です。いきなり
「DNS & BIND改定版」「JF」とだけ書いてあったのでは、
「え、それってなに?」になってしまいます。ちゃんと
bibliographyへのポインティングをしてあげれば、「ああ、
後ろにちゃんとまとめてある奴の一つなんだな」とわかりま
す。
ところで、普通、bibliographyって、Appendix扱いにします?
- 表4.10
jargonについては、esr は、slang/jargon/techspeakをなん
とか定義しようと、ほかでもない``The Jargon File''の中
で努力しています。だから、「hackerたちのスラング」とは、
できれば言ってほしくないです。「hacker独特のいいまわし」
くらいでしょうか。
あ、それから、「ハッカーはクラッカーではない」の紹介は、
できれば脚注からコラムに格上げしてもらえるとうれしいな。
= そのへんは Ken N. さんのおっしゃる「読書感想文」レベルでも「これはちゃ
= うんちゃう」という一言の批評でも私にとってはたいそうありがたいです。
以上、表面だけざっとなめてみました。もちろん全部ではありません。
特に、2章と3章は、本書の目的からすればもっと突っ込みたいんで
すが、まだ十分よんでいません。せいぜい12回くらいです。8章以降
も同様。
今一番リキいれて読んでいるのは「はじめに」です。
#というのはもちろんまじめに言っているんですが、どういうわけか
これを言うと冗談だと思う人がいるんですよね。不思議。
逆にいえば、「はじめに」の読解がまだなので、まだ上記程度のこと
しか書けません。ほんの「どくしょかんそーぶーん」ですが、芳尾さ
んとそれからこの本を購入されたかたの参考になればさいわいです。
ところで...
このくらいは私にとっては「激辛」の部類ではないんですが、恐くなっ
たのなら私はやめてもいいんですけど B-)
続けますか? (y/N)
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*1 「UNIX原典」より: UNIXタイムシェアリングシステムの発展
``The Evolution of the U N I X Time-sharing System.''
D.M.Ritchie
*2 「UNIX原典」より: UNIX環境におけるプログラム設計
``Program Design in the U N I X System Environment.''
R.Pike, B.W.Kerninghan
*1, *2いずれも「UNIX原典」石田晴久監修、パーソナルメディア
社発行、ISBN4-89362-014-2、初版は昭和61年11月
原著は``Bell System Technical Jarnal. Aug. 1984''の第2部
UNIX特集号
#入手はむづかしいでしょうが、参考まで。
-.- . -. -.
Ken Nakagaki <kenn@xxxxxxxxxxxxxxxxx>
「人は船ではない。人は会社ではない」-- Gerry Spence