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Target of Debian JP Project



佐野@浜松です。

最近、Debian JP Project のメンバーが "Project Dice" や
「でびまる制作委員会」など、別プロジェクトを立ち上げて
従来 Debian JP Project が行なってきた活動の一部と重複
するような活動を始めていますが、それについて

   Debian JP Project として、"Project Dice" や「でびまる制作委員会」
   との関係をどうとらえていくのか、役割分担や連携、資源の共用などに
   ついてどう考えていくのか 

ということを議論する前に、まず

   今後、Debian JP Project は何を目的として、どういう活動を
   していくのか

という点を Debian JP Project のメンバー全員で議論して、共通認識
を持つ必要があると思います。

これについて、自分の主張を以下に記します。御意見をお願いします。

 ----- ----- ----- ----- ----- ----- ----- ----- ----- ----- -----

Debian JP Project の「今後」を考えていくに際して、
まずは Debian Project の "SocialContract" 「社会契約」
( http://www.jp.debian.org/social_contract.html )
に相当するような「理念」が必要だと思います。

Debian JP Project の活動において「基本は Debian」という
前提は共通認識だと思います。

"Debian JP Project" のメンバー参加資格として、

  Debian Project の "SocialContract" 「社会契約」を読み、
  その趣旨に賛同すること

というのは欲しい (プロジェクト全体の「合意」としたい) と思います。

今までは、あまりにも「あたりまえ」過ぎたせいだと思いますが、
まだ、明文化されたものは無いですよね。それを「明文規定」として、
今後「知らなかった」ということが起きないようにしたい。

# 今の時点で「知らなかった」という人がいるかどうかはわかりません。
# もし、これについてすぐ「合意」ができないようなら、まずそこから
# 始めましょう。

そしてその上で、Debian "JP" Project の果たすべき役割、
 "Social Contract of JP Project" を考えてみたい、ということです。

"Debian System (OS)" を提供する、というのは Debian Project 自体の
役割です。"JP Project" が一般ユーザーに対して独自にパッケージを
提供する、というのは我々の「目的」ではない。

これは 5 月の議論や、それに続く「独自パッケージ集公式リリース完了」
のアナウンスでも確認されたことです。

# 新人メンテナーの訓練の機会として、パッケージ数と「滞留年数」に
# 上限を加えた上で、ftp site の debian-jp/ 以下を経由した配布を
# 認める、というのはあっても良いと思いますが、それは「訓練」が
# 目的であって、「配布」が目的ではない、と思います。

現在の会則では

        第2条 (理念および目的)

              1. 本会は日本におけるDebian GNU/Linuxとフリーソフトウェアの
                 利用の 健全な発展を理念として掲げる。
              2. 前項の理念に添って、本会の目的を以下の通りとする。
                   1. Debian GNU/Linux の利用技術の確立、会員への普及
                   2. Debian GNU/Linux の健全な発展と普及への寄与
                   3. Debian GNU/Linux を通じて産業、学術、文化への寄与

        第3条 (活動)
                前条の理念及び目的の達成のため、本会は以下の活動を行う。

              1. 会員相互および外部との相互接続性確保と発展のための組織的取組み
              2. 会員への Debina GNU/Linux 利用技術情報の提供とその環境整備
              3. 日本国内への Debian GNU/Linux の普及活動
              4. 海外の Debian GNU/Linux ユーザとの協調
              5. Debian Project への貢献
              6. その他前項の目的達成のため必要となる活動

と書かれています。過去の「独自パッケージ集公式リリース」というのは、
当時の状況から判断すれば、ここに書かれている「理念および目的」に
沿ったものだった、と理解しています。

その後、状況が変化し「独自リリース」を継続することが「理念および目的」に
合わなくなってきた。だから「ステップアップ」することにした。

やなぎはらさんの「退任挨拶」にいわく

  | Debian JP Projectは、日本でDebianをはやらせようっていう
  | 安易な気持ちから始まった (ま、こんな感じですね) のですが、
  | たった 3 年で日本の Linux 界でもかなり存在感のあるプロジェクトに
  | なろうとは思いもしませんでした。

  | 「Debianをはやらせよう」のために作っていった日本語対応の
  | パッケージは、プロジェクト結成当時から Debian Project へ
  | 持ち込もうという事だったのですが、オフィシャルメンテナの
  | 成り手も少なくこの本来の目標をなかなか進めることができませんでした。

  | ただ、このまま進んでいっても仕方なく、Potatoの開発に向けて
  | 「Debian Projectへの統合」という新たなステップへと進み出し
  | たことは、正しい選択だったと思います。

ここにも述べられているように

   「本会は日本におけるDebian GNU/Linuxとフリーソフトウェアの
     利用の健全な発展を理念として掲げる。」

という理念が出発点だった。あくまでも「日本で」「日本における」
ということが頭にあった。

それは、日本で Debian 関連の作業をしている人が少なかったから
「まずは国内で仲間を集めよう」ということになっていったのだと
思っています。

しかし、「時代は変りました」

現在では国内にも Debian ベースのディストリビューションが Debian JP Project とは
独立して存在 (ギデオン、プロサーバー) していますし、今後はもっと数が増えてくる
でしょう。単に「国内で仲間を集めて、日本を中心に活動していこう」という「理念」
では、時代に合わなくなっている、と思います。

先日、PJE の開発中止が報じられました。これも「時代の流れ」の結果でしょう。
たぶん JRPM は今後も活動を続けるでしょうし、コンダラのように別の形で
「後付けパッケージ集」を配布する動きも出てくるでしょうけれど、
現在までのところ「世界 OS」を目指して、しかも既にそれなりに使える形で
存在しているのは "Debian" をおいて無い、と思います。

かつては、海外で日本語環境を必要とする場合、Slackware + JE がお勧め、だった
ことがあるそうです。

現在は、そのようなニーズに対しては、おそらく Debian が一番の「お勧め」でしょう。
なにしろ世界中で販売されている、あるいは ftp mirror されている "Debian System" 
自体に多くの「日本語対応」ソフトウェアが組み込まれているからです。

その中にはもしかしたら JP Project とは関係無いものもあるかもしれないけれども、
すくなくとも JP Project から Debian Project への「貢献」が無ければ、
現在のレベルにはまだ達していなかっただろう、ということは言えると思います。

今後は、さらにこれを拡大し「世界中の Debian ユーザー」を対象にして

  「Debian システム上での日本語環境利用」の健全な発展

を "Debian JP Project" の理念とするべきではないか、と思います。

# cf: 現会則 第 2 条 - 1 
# 
#              1. 本会は日本におけるDebian GNU/Linuxとフリーソフトウェアの
#                  利用の 健全な発展を理念として掲げる。

また、これからは「海外の一般ユーザー」が、日本語環境を使いたいために
 Debian System を利用する、といったことだって十分考えられます。

# 既にそういった利用についての質問メールが届くこともあります。

「日本語対応パッケージ」が用意されていても、それだけでは使いこなせない、
ということは十分考えられます。どうすれば利用できるのか、といった
「日本語環境の利用技術」は日本国内のユーザーだけに有益なものではなく、
「日本語環境の利用」に興味のある (non Japanese Native 含む) 世界中の
 Debian ユーザーにとって有益なものであるはずです。

「日本語環境の利用技術に関するサポートの提供」を通じた
「Debian System の (世界レベルでの) 普及活動」を
 "Debian JP Project" の活動の柱としても良いのではないでしょうか。

そのための「場所」として debian-japanese@.org ML を利用させてもらう、
といった方法論はアリでしょう。あるいは「日本語を勉強したい Non Native
 Japanese のための場所」を @JP な ML として用意する、といったことが
あっても良いかもしれません。

# cf: 現会則 第 3 条 - 3
#
#              3. 日本国内への Debian GNU/Linux の普及活動

そういえば以前 Debian Project の運営する debian-japanese ML で Xemacs の
メンテナーが「今度メンテナー交代したけど、日本語サポートとか
よくわからないから、協力して欲しい」と書いてきたことがありました。

# 鵜飼さんの日誌とか、ML にもあったかな ?

また、香田さんと私で xfig の日本語関係を担当している Original Author の
佐藤さんと Debian Maintainer の Roland との連絡を仲介して、xfig / transfig の
 Debian Package に完全な日本語サポートを取り入れてもらったこともありました。

JP Merge Operation によって Debian Package に日本語パッチを入れてもらっても、
メンテナー自身は日本語サポートのテストができない、という場合も多いでしょう。
"JP Merge Operation" は、ひととおりの作業が終っても、ずっと継続するものです。

もちろん unstable のテストと Bug Report は JP Project のメンバーでなくても
できることですが、「知識の集積」と「一人ではできないことをやる」ために、
"JP Project" として「Debian システム上での日本語環境利用」にフォーカスして
いくことには、意味があるだろうと考えています。

今までは「独自インストーラ」の開発などもやってきたし、「独自パッケージ集の
公式リリース」もやってきた。でも、これからはそういうことじゃなくて、もっと
ステップアップした形を目指していくんだ、という共通認識を持つためには、
現在の会則にある「理念と目的」「活動内容」の部分だけでも更新したほうが
良いと思います。そしてそれを Debian JP Project の Social Contract として
宣言したいと考えています。

# -users ML でかねこさんだったか「JP Project のほうではどういう対応を
# するのか」と質問されてました。あの質問に対する答えを、JP Project と
# してはまだ 出せていないと思います。

"Debian JP Project" が提供している users ML や devel ML は「日本語で
情報交換ができる互助会」として有益な存在だと思います。この互助会を、
日本国内にとどめておく必要は無いと思います。我々は、世界に向けて

   「Debian システム上での日本語環境利用」の健全な発展

を理念とした活動を開始するべきだと思いますし、そのために必要な貢献を
 Debian Project に対して行なっていくべきだと思います。

# それによって "Debian" に対して貢献するだけでなく "JP" (日本) に
# 対しても貢献することができます。
# 世界に対して「日本語の文化」を紹介していくための一環であるという
# 意味で、です。

-- 
 <sano@debian.or.jp> : Taketoshi Sano (佐野 武俊)