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[debian-users:12868] フリーソフトウェア? (Re: backspace キーについて、)



遠藤です。

# Bugsy さん Backspace キーの問題はなんとかなったのですか?

さて、今回のようなやりとりはこの ML 上でも何度か見かけたことがあるので
すが、そのすれ違いの要因の一つに「フリーソフトウェア」に対する理解のず
れがあるのかなと思いました。

で、私の理解の範囲内で、そのずれについてまとめつつあったものがあるので、
ちょっと手直しして投稿させていただきました。無相応な発言ですが、何かの
参考になれば幸いです。

あと、間違いがあれば教えていただけるとうれしいです (これが目的だったり
して...)。なお、佐藤さんのメールにスレッドを繋げましたが、特定の誰かに
あてて書いた訳ではありません。

# この私の文章はフリーソフトウェアです :-)。

1. フリーソフトウェアは、無保証な代わりに*自由*なんです。

Debian GNU/Linux はフリーソフトウェアです。「Debian フリーソフトウェア
ガイドライン」に適合するフリーソフトウェアは、いくらかの制限がある場合
もありますが、誰が何の目的に使っても自由ですし、修正したり、改良したり、
それを誰かにあげたり売ったって構いません。Linux なんかの場合、無料であ
ることや技術的に優れていることが注目されていますが、それが「自由」であ
ることには、もっと目が向けられる必要があるかと思います。

ただ「この自由を守るためにフリーソフトウェア自体が無保証であること」に
は注意を払う必要があります。つまり、特定の誰かに、フリーソフトウェアの
不具合を直さなきゃいけないといったような責任は*ない*ということです。こ
れは責任逃れというよりは、誰にでも自由に使ってもらうことを保証するため
にそうなっているのです。(もちろん作る側にそれを求めちゃ、誰もソフトウェ
アを公開しなくなっちゃいます。)

2. 誰に責任があるの?

でも、ソフトウェア (文書を含む) には実際のところ手直しが必要な問題点や
改良点はいろいろあります。じゃぁその作業を「実際誰がやるのよ」という話
しになります。で、その答えは*基本的*には「誰がやっても構わない」、「や
りたい人、やれる人がやる」です。(最初に言い出した人がやることになる
「言い出しっぺの法則」というのもあるようですけど...)

そんなイイカゲンなことで大丈夫?と疑問を持たれるかもしれませんが、
Linux カーネルの開発は、この方法の有効性を示す一つの事例でもあるかと思
います。(商用 OS よりバグフィックスが早かったりしますよね。)

で、例に出して申し訳ありませんが、ちょっと話題にあがった「Debian
Policy の翻訳」に関して言えば、元々の作業をされていた方にも、不具合を
指摘された方にも、それを直す義務はありません。直す*権利*があるのです。

# これを書いてる僕にも、読んでいるあなたにもその権利はあるんです :-)。

ですから、不具合を指摘することは利用者全体の利益につながることでうれし
いことなのですが、その手直しの作業を一方的に誰かに押しつけて「自分はや
んない」というのはイヤーンなんです。そういう方は「お客さん」とも呼ばれ
ていますが、フリーソフトウェアを使う以上、残念ながら何らかの保証や責任
を誰かに求めることはできないんです。これがいわゆる "at your own risk" 
です。もちろん、自分の責任で出来ない場合は、しかるべきところにお金を払っ
て解決することもできるかもしれませんし、*丁重*にお願いすれば誰かが助け
てくれる場合も多いものです。(感謝)

3. みんなの Debian GNU/Linux

商用ソフトウェアを使っている方が「このソフトウェアにはこんな不具合があ
る、こんな機能がない」なんて愚痴をこぼされつつ結局我慢しているのをよく
お見かけしますが、フリーソフトウェアの場合は、「自分でなんとかしちゃう」
という最終手段が残されています。知識さえあれば、まぁ無いとしても、学べ
ば学ぶほどそれなりに自由がひろがって、好きにできるわけです。

# 確かにそんなにうまく行きっこないですど、可能性はより高いということです。

で、その成果を共有していく試みの一つが、この Debian プロジェクトなんだ
と思います。真に開かれた開発体制がここにあるわけで、この ML もその一環
ですよね。

Debian GNU/Linux は、(個々のソフトウェアに著作権はありますがその総体と
いう意味では)、特定の誰かのものではなく、私たちのものです。立場の相違
はありますが、この「私たち」には、自己責任を了承されている Debian の利
用者すべてが含まれると思います。Debian GNU/Linux を開発しより良いもの
にしていくのは、「僕とあなたを含むみんな」なんです。

4. おまけ

contribution (貢献) にはいろんなものがありますが、その一つとして、やり
たいことをやれる範囲で、Debian GNU/Linux の開発に関連する作業に実際に
携わってみるのはいかがでしょうか? (実際要領が分かれば、技術的な知識も
それほど必要なく短時間で出来る作業もあります。)

# お願いではありません。私の個人的なお誘いです。

また、まだ開発系の ML を購読されたことのない方は、debian-devel や
debian-doc、debian-ww などをちょっと購読してみてはいかがでしょう? 
OS の開発に関わる実際の作業を社会見学できますし、やってみたくなったら
参加することも、いやになったらやめることも自由です。(もちろん、礼儀を
わきまえることは極めて重要です。)

contribution の第一歩を Debian で始めてみませんか?

# 誰かのためにというよりも、自分のためにです。

-- 
Yoshizumi Endo <y-endo@xxxxxxxxxxxxxxx>